2002年に書いたらしい(記憶にない)小説の断片を発見。
案外わるくないんじゃないかと思うので、後悔しようと思う。
もちろん更新する暇がないとか精神的余裕とか、いろいろあるが。
うーん、なんていうかな、先に言い訳していると、うーん、絶句というか(ぉ
蒼穹の空に、一羽の鳥が羽ばたいていった。
風を掴む翼は白く、雪のように淡い。鳥類特有の流曲線を描いた身体に無限の力を秘めながら、鳥は空へ向かう。微かな風きり音が、梢を揺らした。
「……ん」
その気配を察したのだろうか、土手で寝転がっていた一人の少年が目を覚ました。
赤茶色の髪は寝癖によって逆立ち、重力に逆らって鳥のように空を目指している。寝起きで不機嫌そうな表情は、本来なら清淡な顔つきであるはずなのに、その質を確実に下げていた。
まだ寝ぼけているのか、彼は数度、首を回して辺りの様子を伺った。それから何かを納得したように、ああ、と言葉を吐き出す。どうやらなぜ自分がここにいるのか忘れていたようだ。それからゆっくりと立ち上がり、乱れた赤茶色で統一された制服を整える。
右胸に縫い付けられている白い楓の葉の紋章が、陽光に反射して煌いた。それは、王立魔道学園で彼がデ・ィアン級に所属していることを示していた。そこは最も優秀で、最も能力に秀でた氣操術士の集まる場所である。
彼は大きく伸びをすると、目尻に溜まった涙を袖で拭った。目元はまだおぼつかなく、気を許した瞬間、再び眠りの世界へ誘われそうだった。数度舟を漕ぐと、彼はもう一度大きな欠伸を付いた。ようやく目が覚めてくる。
「あー」
髪を掻きながら、自分が何か忘れているのに気づいた。
講義ではない。すでにそれは終えている。もっと別の、もっと重要で、もっと大切な約束。記憶力はよいほうなのに、時々些細なことを忘れてしまう。そのことを知っているのは、自分と、幼馴染で今はオフラー級に所属している親友だけだった。
オフラー級は最上級であるデ・ィアン級から三つランクを落とした級で、数多くの氣操術士が所属している場所である。一般的な呼称で言えば、"平均的"な氣操術士が所属しているということになる。
尤も、オフラー級であっても入れるのは実力が伴ってなければならず、決して"平均的"というわけではなかった。
しばらく記憶から探してみるが見つからず、結果は髪の毛が乱れただけだった。
今更のように気づいた彼の表情が歪み、やがて落胆へと変わる。今の髪型は前衛芸術のそれに近く、少なくとも"平均的"な精神の持ち主が他人に見せられるような髪形ではなかった。小説に出てくる、マッドサイエンティストでさえ、こんな髪形をしない。
「癖っ毛って、めんど……」
憂鬱と落胆の混じったため息を吐き出して、彼――エール=デ・ピアは髪形を整えるべく、宿舎へと足を向けた。
セセナセラ
(1)
レミ=タリアは急いでいた。ひしめく生徒たちの群れを避け、公衆衛生の精神を植えつけられるために備え付けられたゴミ箱と接触して、周囲の生徒たちに謝りながら一緒に片付け、それが終わるとまた再び廊下を駆け出す。必死だった。これほどまでに必死になったのは、ついこの前、試験の最中トイレに行きたくなって一時間を鬼気迫る思いで耐え続けた――試験は当然のように落ちた――、あの時以来だ。
よく手入れされた薄茶色の髪は背中の中ほどまで伸び、前のほうはカチューシャで留めているので、大きく見開かれた丸い瞳が印象に残る。王立魔道学園の女子制服はスカートが短い。走ればスカートが捲れてショーツが見えてしまうのに構っていられない。右胸には何の刺繍も無い。赤茶色の繊維が、全身を覆っているようである。
本当なら泣き叫びたかった。しかし、そんな事をしたって意味が無いことは十分に判っていた。試験教官ヲレオが許してくれるはずが無い。
あの時の失敗を繰り返さないようにしようと、経験に学ぶレミは試験の前に余裕を持ってトイレを済ませておいた。そうしていれば、あの時のように焦る必要も無い。それは素晴らしい考えだった。だが、彼女は運命の不意打ちを考えていなかったのである。
彼女はア・エマ級に所属する氣操術士である。言わば、彼女は氣操術士の卵だった。本当なら前回の昇級試験に合格し、正式な氣操術士として認められるエマ級に上がっているはずだった。
はずだったのに――
(生理現象のばかぁ~!)
敵は自らに存在する。そう昔の人は言葉を遺していた。彼女はその言葉を失念していたのである。如何に問題を解くか、如何にエーテルを操るか、その事ばかりを考えていた。生理現象など初めから無いものだと思っていた。
だから、今回は完璧だった。済ませるものは済ませた。勉強もやった。予習もやった。あとはもう、試験を受けるだけだ――そう思っていたのに。
レミは駆ける。その形相に生徒たちが畏怖しながら道を空けているのを、今だけ感謝した。
問題はいつだって些細なことだ。しかし、その積み重ねが大きな事象となる。ポートアルファで蝶が羽ばたくとインバットで嵐になるという話は、どこで聞いたのか。
(そんなこと関係ないのーっ)
自らの思考を叱咤しながら、彼女は階段を駆け上がって二階に出る。ここまで来ればあと少し。距離にすれば数十メートル。
(時間は……?)
四角く切り取られた窓から時計台が見える。だが、遠すぎて分針までは読めない。
仕方なく時間のことは忘れて、走ることだけに集中しようとした、その時だ。
キーンコーン……
「ええぇっ!?」
絶叫してしまった。僅かに廊下に残っていた生徒たちの視線が自分に向かうのにも気づかず、レミは窓に駆け寄って時計台を見つめる。時針と分針は綺麗に重なって、天を指差している。そのことが意味するのは、すでに試験が開始されたということだ。
なぜ分針が見えなかったのか――それは、もう時針と重なっていたからだということに気づくまで、しばらく時間を要した。
全身から力が抜けていきそうになるのを必死で堪えて、レミは重い足取りで試験教室に向かった。まだ、望みが消えたわけじゃない。数分遅れたくらいなら、救済処置で何とかなるだろう。
根拠の無い希望を胸に抱きながら、レミは静まり返った教室に入っていった。
「だめです」
――こうしてレミ=タリアは、三度目の昇級試験に落ちたのだった。
◇
死んだ魚の目というものを見てみたい。レミは学園内の一角に備え付けられているベンチに腰をかけ、空を仰いだ。
青いキャンバスの中に、ホワイトグレーのペイントを垂らしたような雲が浮かんでいる。上空は風の流れが速いはずなのに、少しも動いたように見えない。
「はぁ……」
これで何度目とも知れないため息を吐き出して、
「また、ア・エマで勉強……」
今、自分の瞳がそうなっていることに気づかないレミだった。
学園内は喧騒にあふれ、楽しげな雰囲気で満ちている。この中にいると、まるで自分が異物のように思えて、自己嫌悪に陥りそうになる。
昇級試験に落ちるのは珍しいことではなかったが、三度目となるとそれは別だ。勉強のでき云々だけではなく、氣操術士としての資質さえ疑われる。尤も彼女の場合は、試験結果以前の問題なのだが。だがそれでも、自己管理ができていないということでは、問題といえば問題だった。
氣操術士は自らの管理も出来なければならない――入園式で園長がそう言っていたのを思い出す。
atogaki
こんなの書いてたのか(ぉ
もう何を目的にしていたのかわからないよね(爆
若さっていいよね、などと、わかった風な口を利いてみる。
しかし、2002年か・・・もう、五年も前だね。その頃の自分をもう思い出せない。
2002年はEver17フィーヴァーに燃えていたよ。たしか。SSを書きまくった・・・ような気がする。三本くらいだけど、なかなかあそこまで創作意欲の刺激されたゲームはない。
何かの機会にEver17と接することがあったら、ぜひやってほしい。大絶賛。しばらく呆けてしまうくらいにはまった。
うーん、話はずれてしまったが、続きの予定はないのですね。
つーかなんだよこのクラス設定は。オリジナル言語とかやめてほしいよね(喀血
うわーうわーうわーうわー・・・・(エコー
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